子供の育ち方と育て方

     神経発達の特殊性

 ンギャーと大きな産声を挙げた赤ちゃん、心臓はしっかりと拍動し、母乳を元気良く飲んで、おしっこや便も大人と変わりなくしますね。多くの内臓は赤ん坊と大人でそれほど差はありません。大きさと効率が少し違うだけなのです。

 ところが1,2カ月までの赤ちゃんは手を出して物を持つことも、話すこともできません。つまり運動機能や知的な関心、言葉、記憶、創造力などの発達については人間としては0からの出発なのです。 脳の大きさを考えてみると、生まれた時の脳の重さは約400g,1歳では800gですから、1年間で400g増えますが、1歳から大人になるまでには800gから1400g, つまり20年近くかけて600gしか増えません。このことからしても、まだ物も言えない赤ん坊の時期が神経発達にとっては最も大切な時期だと言えます。

 現象面から見ると、生まれて2~3カ月まではお乳に吸い付いたり、手に触ったものを握り締めてしまう、原始反射と呼ばれる動きが強く見られますが4カ月になると、これらは徐々に無くなってきます。6カ月頃になると、前庭機能と呼ばれる体のバランス感覚が発達し、おすわりやハイハイの準備段階に入ってきますし、9カ月頃になると、敵味方の識別つまり人見知りが始まりますし、言語に近いマンマムといった喃語が盛んに聞かれるようになります。

 このように赤ちゃんの時期は時事刻々と非常に急速に神経が発達する時期ですから、ミルクが足りなくて脳が成長するための栄養が不足したり、咳が強くて呼吸困難が続くと脳に必要な酸素が足りなくなり神経発達に悪影響を及ぼすことになります。子供の神経疾患で一番多いのが実はこの神経発達がうまく行かない状態で100人中3人とも言われますから、育て方の第一はこれらの危険因子を早く取り除くことなのです。

 もう一つ大切なことは、あと1~2カ月でこんなことができるはずだと言った予測を立てて、そのための手助けをしてあげることです。もし予測どうりに出来てこないようであれば、素人判断をせず、早めに専門家の意見を聞くことでしょう。神経疾患は専門医にしかわからないものが多く、早めに手を打てば治療できる例も少なくありませんが、2~3歳になって症状が固定してしまうと、医学的には対応できないことが多いのも特徴です。

子供の数は年々減少し1993年の出生数はとうとう史上最低で118万人にまでなってしまいました。(2018年の出生数は92万1千人) このような少子化の時代には、生まれた子供を精神的にも肉体的にもより健全に育てることは、ご両親にとってだけでなく社会的にも非常に大切なことなのです。
(愛媛新聞奥様ジャーナル原稿)